透析患者の理学療法の時間について
こんにちは。理学療法のみっちです。今日は何かと悩みが多い透析患者さんの理学療法の実施時間について書いてみたいと思います。
1.透析患者さんの諸問題
透析患者さんは内部的な問題のみならず、運動機能にも問題を抱えている事が多いです。特に糖尿病性腎症から維持透析に至った方は自律神経障害が顕著な方も多くいるため、血圧の管理が難しい場面があります。以下によく遭遇する問題点を挙げます。
①筋力低下
②動脈硬化性疾患
③自律神経障害
④透析関連低血圧
⑤骨代謝異常
⑥認知機能障害
⑦易感染性
など、リスク管理として押さえておかなければいけない項目が多数あります。また、リハビリテーション自体のモチベーションが低い(倦怠感などにより)方も多い傾向にあり、中々リハビリが進まない事もあるのではないでしょうか。
2.透析中の運動療法
近年特に透析専門のクリニックや病院で多くみられるのが、透析中に運動療法を行う「透析中運動療法」といわれるものです。これはベッド上で透析時間中に簡単なストレッチや筋力トレーニング、寝たまま漕げるエルゴメーターなどで20分~60分程度の運動を行います。当院でも症例を限ってですが、実施しています。
透析中の運動療法のメリットは何といっても、透析中に運動する事で透析日以外でリハビリに通院する必要が無いことです。透析には絶対来ないといけないので、運動時間もしっかり確保できるという事です。また、ある程度監視下で実施できるため、リスク管理も十分可能で安全といえます。透析中運動療法に関しては透析効率の改善や下肢筋力向上、歩行能力の向上なども認められているようですが、ある程度の期間実施する必要があります。
透析中運動療法を行う場合は医師の指示の元、可能であれば心肺運動負荷試験を行い、適切な運動強度で実施する事が望ましいです。特に心血管系のリスクが高い方が多いので、心負荷に注意する必要があります。
デメリットはやはり、運動の種目ではないでしょうか。もちろん歩行練習などはできないですし、起立動作もできません。あくまでもベッド上で行える運動になりますので、運動の目的によっては不十分な場合もあるでしょう。
3.透析時間外の運動療法
これは透析時間以外で運動療法を行う事です。例えばよくあるのは非透析日にデイサービスやデイケア、外来リハに通うパターンです。これは透析が無い日に行われるので、歩行練習やADL動作練習など様々な運動を組み合わせて実施する事が可能です。また自主運動として散歩なども可能かと思います。
しかしながら、透析日の無い日は何かと家の用事や趣味など自分のしたい事に時間を当てる方が多いので、運動までたどり着かない方もいるかと思います。
4.入院中の運動療法時間
最後に何らかの原因で入院している透析患者さんの運動療法の実施時間についてです。個人的には「午前中にリハビリをして午後透析」がリハビリスタッフとしては1番好ましい時間設定です。これは午前中にしっかりリハビリができる事が最大のメリットです。コンスタントに毎日リハビリが実施できます。
「午前透析して午後リハビリ」はどうしても透析後は疲労や血圧の変動があり、リハビリが実施できない場合があります。透析直後の運動はオススメできないので、リハビリ時間を夕方にしてかつ、患者さんの体調やバイタルが大丈夫であれば、低強度で実施するといった感じになります。
ただ、午前リハビリして午後透析パターンは4時間透析だと、透析室への迎えが看護師の準夜勤務時間と重なるため、病棟目線でみると大変かもしれません。また、リハビリしている透析患者さんを全員午後透析に回す事は、透析室を運営する上で他の患者さんとの兼ね合いもあるため、難しい場合もあります。
「どうしても午後透析じゃないと困る」という理由があれば医師や看護師に相談してみましょう。当院では治療のメインがリハビリの場合は主治医が透析を午後に変更してくれている事があります。やはり医師のツルの一声は強いですね。
5.おわりに
今回は透析患者さんのリハビリ実施時間について書いてみました。ケースバイケースにはなりますが、リハビリの効果をしっかり引き出せるように時間を調整したいですね。